離してよ、牙城くん。




七々ちゃんは、いつだってひとりで戦っていた。


不良になったふりをして、影ではお母さんの負担を減らす努力をしていて。

わたしに避けられても、ずっと決心を揺らがずにいて。




わたしは、……なんて酷い言葉を七々ちゃんに言ってしまったんだろう。


七々ちゃんは、自分ひとりだけで家族を守ろうとしてくれていたのに。






「七々ちゃんの、ばかっ……」




やっぱり、七々ちゃんは、変わってなんかいなかった。





「……なんでっ、なんで言ってくれなかったの……!」






心が痛くて、痛くて、七々ちゃんに申し訳なくて。


知っていたら、わたしももっと何かできていたはずなのに。

ふたりなら、怖くなんかなかったのに。





「ごめんね、もも……、だって百々は優しいから、自分もするって言って聞かないでしょ……?」



「あたりまえじゃん……っ、七々ちゃんだけがすることじゃない」



「そう言うと思ったから……、夜の世界は危ないのに、百々がこっちに来たらダメだから……、どうしても言えなかったんだ」










< 319 / 381 >

この作品をシェア

pagetop