離してよ、牙城くん。




牙城くんと出会った日、わたしは、牙城くんが消えてしまいそうな人だと思ったんだ。


儚いという言葉がいちばん似合う、銀髪の彼。




わたしと出会って少しでも変わったと言ってくれたら……、それだけで、わたしはとっても……嬉しいなあ。





「……牙城くんは、すっごく強引だし、適当だし、面倒くさがりで。授業はまともに受けないし、ほかの女の子には超塩対応だし、わたしに引っ付いてばかりだし。
困ったなあ……って思う日も、たくさんあった」




彼が転入してから、朝から帰るまで、ずっと牙城くんとの思い出しかない。

毎日が牙城くんで埋め尽くされていて、なんだか彼のおかげで忙しなくて、なんでこの人にこんなに好かれたんだろう……なんて考えた日も少なくなかった。





「……お約束三か条なんて変なものは作るし、男の子には威嚇するし。禁煙だからって毎時間、棒付きキャンディーばかり食べてるし。
牙城くんという人が、すごく謎に包まれていて、でも、いっしょに過ごす時間は……とても楽しかったの」






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