離してよ、牙城くん。
牙城くんは、不思議な人だ。
みんなを魅了し、愛され、でも、何があっても一途な人。
そんな人を嫌いになんかなるわけなくて。
恥ずかしくて拒絶ばかりしていたけれど、恋心が芽生えるのは必然的で。
「あの日、あの場所で牙城くんと出会ったのが……、わたしでよかったって……思うんだ」
もし、あのときわたしじゃないひとが牙城くんに声をかけていたら?
きっと、いまとはちがう未来が待ち受けていたに違いない。
七々ちゃんに別れを告げられ、苦しんでいた牙城くん。
そんなときに、彼に出会ったわたし。
……お父さんが言っていた、神と愛の導き。
それは、あながちフィクションでもなんでもなかったのかもしれないなって、思っちゃったんだ。