離してよ、牙城くん。
牙城くんを不安には、させたくないから。
伝えられることくらいは、たくさん言ってあげたいな。
しどろもどろになって答えるわたしに、牙城くんは目を見開く。
……わたし、変なこと言ったかな?
心配になって、彼の腕の中でひとり焦ってしまう。
ううっ……、早く何か言ってよ……。
恥ずかしくって、不安で。
返答を待ち続けるわたしに、牙城くんは、いままで見たことがないほど……うんと幼いやわらかい笑顔を、向けてくれたのだ。
「百々ちゃんのそういうとこ、一生惚れる」
とびきり甘い笑顔でささやいた牙城くんは、わたしの腰を引き寄せて、至近距離で目線を交わせる。