離してよ、牙城くん。




彼の腕が回される腰。

交わる視線。



……近づく唇。




ぜんぶ、意図的に牙城くんが仕向けたもの。


つまり……、牙城くんが、いま、考えてること。







「…………キスしたいんでしょ、牙城くん」







真っ赤な顔して言うわたしに、牙城くんはにやにやが止まらないらしく。


セーカイ、と言わんばかりの自信に満ち溢れた表情を見れば、もう降参だって思っちゃう。



こんな幸せそうな牙城くんが見れるなら……、負けてもいいかなって、……とってもとっても愛おしいって話。




「はっ、……もーほんと、カワイーね」






そーだよ、とこぼした彼の言葉は、合わさる唇のおかげで消えていった。



甘く熱を灯すキスに、通じた気持ちも相まって、止まらなくなる。





「……っん、が、じょ、く……っ」



苦しい、息がもたない。

……それでも、離してほしくない。





「……喋っちゃだめ、しんどいでしょ」





「う……っ、んん、」







< 351 / 381 >

この作品をシェア

pagetop