離してよ、牙城くん。
「渚さんっ、美耶さんっ、失礼しまっす!」
「……失礼します」
紫苑と廉って、いつ見ても対照的。
お互いがお互いを信じ合っているのか、いつもいっしょにいる。
こいつら、いつか俺らの席に座ってくれないかな、と密かに思っているのは椎名もおなじだと思う。
どーした、と尋ねる俺に、紫苑が眩しい笑顔で最初に口を開いた。
「俺……、あのとき渚さんに頼られて、すごく嬉しかったです」
照れくさそうに微笑む紫苑。
その横で、廉も静かにうなずいている。
あのとき、と言われ、うっすらと思い出す。
百々ちゃんがさらわれ、情緒が不安定になったときに、俺がした、ふたりへの頼みごと。
『……ちょっと手伝ってくんない?』
そう、俺が試すように聞いたとき。
ふたりは、真剣にうなずいてくれた姿が目に焼き付いている。
『も、もちろんですっ』
『俺たちで良ければ……』
『ん、おまえたちがいい。
……七々を、呼んで。俺は会いたくねえから、そのまま【相楽】のところへ向かわせてくれたらいい』