離してよ、牙城くん。





「やっ……、あの、モモさんにひとめぼれしたとか、ち、ちがうんですよ……?」




ほら、その慌てよう。

廉も、お前見て、ため息ついてるって。




反応がオーバーで、だれが見たってわかるだろ。



……墓穴掘ってるわ、バカ。



百々ちゃんにひとめぼれしたであろう紫苑を見つめ返す。




……そうだよな、百々ちゃんまじ可愛いもんな。

顔だけじゃなく、優しいしふわふわしてるし癒されるもんな。

なんっつうか、男心をくすぐる女の子だよな。



俺がこの世でいちばん共感できると思うけど……、なんか、ムカつくね?







「紫苑。わるいけど、俺、渡さねえよ?」





だれを、とは言わなかった。


わざと明示しなかったのは、百々ちゃんは俺の、という見せつけ。


後輩には申し訳ないけど、ぜったい百々ちゃんだけは譲れねえの。




< 366 / 381 >

この作品をシェア

pagetop