離してよ、牙城くん。
「やっ……、あの、モモさんにひとめぼれしたとか、ち、ちがうんですよ……?」
ほら、その慌てよう。
廉も、お前見て、ため息ついてるって。
反応がオーバーで、だれが見たってわかるだろ。
……墓穴掘ってるわ、バカ。
百々ちゃんにひとめぼれしたであろう紫苑を見つめ返す。
……そうだよな、百々ちゃんまじ可愛いもんな。
顔だけじゃなく、優しいしふわふわしてるし癒されるもんな。
なんっつうか、男心をくすぐる女の子だよな。
俺がこの世でいちばん共感できると思うけど……、なんか、ムカつくね?
「紫苑。わるいけど、俺、渡さねえよ?」
だれを、とは言わなかった。
わざと明示しなかったのは、百々ちゃんは俺の、という見せつけ。
後輩には申し訳ないけど、ぜったい百々ちゃんだけは譲れねえの。