離してよ、牙城くん。
俺の言葉に、目をぱちくりとさせた紫苑。
まだまだ幼いな、なんて、親目線で思うけれど、言ってもひとつしか歳変わらねえんだよな。
1年前の俺よりもうんと立派で。
こんな俺を、ずっと慕ってくれている紫苑へ。
ごめんね、百々ちゃんは何があってもあげない。
でもさ、紫苑に愛される未来の女の子は、きっと幸せになるんじゃない?
くすっと笑って言えば、紫苑は嬉しそうに大きくうなずいたのだ。
「渚さんみたいに……、ビッグになります!」
高らかに宣言する紫苑に、苦笑いする。
……やっぱ、こいつ、可愛いかも。
「え、俺ビッグなの?」
笑って言う俺に、紫苑は当たり前だとでもいうように、大真面目にうなずいた。
「俺ら【狼龍】の下っ端にとったら……、渚さんは、すごくすごく手の届かない大きな存在で……、本当に素敵な人です」