離してよ、牙城くん。





手の届かない……、大きな存在、か。





「ん、……そっか、ありがとうな。紫苑」




それに廉、と付け加える俺をみて、紫苑と廉は微笑んだ。


失礼しましたーっと、満足したように部屋から去っていったふたりを見届け、またもや椎名とふたりきりになる。



ふたりが出て行った扉のほうを見つめ、

あいつら可愛いなって俺が言えば、椎名はくつくつ笑って呟くのだ。




「ナギくんがこんな面倒見よくなるとか、過去のオレに教えてあげたいわぁー」



ぜったいめっちゃ驚くよ、と目を細める椎名に、唇を尖らせて反抗する。




「俺だって、彼女一途になった椎名を教えてあげたいわ。ま、信じてくれねえだろうけど?」


「オレはもともと遊んでなんかないよ? ただ両手に花で充分だったからさ」



「……椎名さ、もうそれ、クズ発言って気づいて」


「え、オレってクズなの?」





< 370 / 381 >

この作品をシェア

pagetop