離してよ、牙城くん。





自覚のない椎名に、百々ちゃん超一途の俺が極意を教えてあげようかと思ったけれど。


……まあ、椎名は椎名のままでいいんだよな。




橘も、こんな椎名を好きになったんだし。


自分らが幸せなら、俺が口出しすることじゃない。




「なあ、百々ちゃんに会いたいから会ってきてもいい?」




人の恋路を考えていたら、急に百々ちゃんに会いたくなった。


集会終わったら会おーね、ってはにかみながら言ってくれた百々ちゃんを思い出す。





……あー、いますぐ抱きしめたい。


なんでここに百々ちゃんがいないのか、意味がわからなくなってきた。




……や、そもそも、こんな野蛮なところに大切な彼女を連れてくるわけないんだけど。

ほかの男に見られるのも嫌だし、あの一件で、百々ちゃんのファンが急増したし。




百々ちゃんに1秒たりとも離れたくない俺にとっては、男だらけのむさ苦しい集会はさっさと終わってほしいもの。







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