離してよ、牙城くん。
「……集会はじまるギリギリ5分前には戻ってくること。
その代わり、後でちゃんと総長として仕事はしてよ。頼むから」
「ん、椎名さすが」
「ハイハイ、もうナギくんの扱いは慣れたもんだって話〜……」
さっそく百々ちゃんに電話をかける俺に、もう何も聞いてこない椎名。
メッセージ画面を開いてるところから予測するに、椎名だって橘とやり取りしてるんだろう。
少しゆるんだ頰を見て、なんだかこっちも幸せな気持ちになった。
3回ほどのコール音。
少し長めに待てば、百々ちゃんの慌てた声が耳に入ってきた。
やわらかくて、優しいトーン。
いつ聞いても落ち着く、百々ちゃんの声に安心する。
『……っが、がが牙城くんっ、え、エスパー……?!』
それなのに……、百々ちゃんはいったい何を言ってるんだろうか。