離してよ、牙城くん。
『う〜〜っ、いく……っ』
電話越しから聞こえる震える声ですら、もう愛が溢れ出る。
行く、ってやばくね。
可愛すぎるにもほどがあると思うんだけど。
百々ちゃんの家に向かう道。
俺が行くから待ってて、なんて一人前に言ったくせに。
……目の前から走ってくる百々ちゃんを見つけた途端、すべての感情が吹き飛んで、駆け寄る大好きな彼女を包み込んだ。
「うへへっ……、がじょーくんだ……」
走るの苦手なのに、俺のために急いでくれた愛おしい彼女。
これだから、また、……もっと離したくなくなるんだよ。
百々ちゃんのやわらかい髪を撫でながら、……なんだかすごく幸せすぎて、「……ん、」しか言えなかった。