離してよ、牙城くん。
授業受けるのは、学生の本業なんだから。
当たり前のことなんだから。
ゆるして、なんて言ってる割に、申し訳なさそうな表情ではいっさいない。
口角、あがりすぎだもん。
あちらは楽しんでいて、
わたしがわがまま言ってるみたいで面白くない。
それでも、ずっと拗ねていたらそれこそ面倒くさい女だから、「……ゆるす、」と仕方なく白旗をあげることにした。
「ん、ありがと」
とびきり優しくささやいて、わたしの顔を赤くさせると、満足したように立ち上がった。
「あ、そうだ」
座っているわたしに手を出し、おなじく立たせると、なにかに気づいたように声をあげた。
「俺、今日 まったく教科書持ってきてないわ」