離してよ、牙城くん。
そう?と首を傾げる。
その様子を見ていた牙城くんは、無言でわたしの頰をつねってくる。
それは痛くなかったけれど、なんでそんなことするの、と目で訴えたら面白そうに笑われた。
意図がわからない。
牙城くんは、ほんとに不思議なひとだ。
わたしには、おかしいくらいにスキンシップが激しいし、よく笑う。
それなのに、友だちや他人にはまったく愛想がない。
わかりやすいはずなのに、それは言葉じゃないせいか、真意が透けていなくて。
特別だから嬉しい、とかそういう感情ではいられないのも事実だ。
……なんて言いながらも、牙城くんと話すことは楽しいし幸せな時間、だから。
触れられてドキドキするのも、自分では止められなくて。
触れられたところを妙に意識してしまって、なんだか少し恥ずかしくなった。