離してよ、牙城くん。
「ヘーキヘーキ」
棒読みだよ……。
なにやら人質?なんて物騒な言葉が聞こえてきたのに、それを助けに行かなくていいのかと不安になる。
あちらの通話相手はとても焦っていたようだし、きっと牙城くんがいないと大変なんだと思う。
「……行かなくて、いいの?」
小さく尋ねると、牙城くんはあっさりと頷いた。
「いい、あんなの俺行く意味ねえし」
どこか怒ってるようにぶっきらぼうにそう言うと、彼はぐったりと地面に倒れこんだ。
「なあ、百々ちゃん」
「な、なに……?」
「百々ちゃんまじでかわいいわ」
「ふはっ?!」
「不意打ち作戦。キュンときた?」
なにそれ、なにそれ。
しょうもないし、キュンとしないわけないのに……っ。