離してよ、牙城くん。
牙城くんというひとは、さっきまで不機嫌だったのに、急ににやにやと口角をあげている。
わたしの赤くなった頰をふにふに触って楽しんでいる。
「そーやって俺だけ見てたらいいよ」
「牙城くんだけ……?」
「そ、俺だけ」
正直言うと、牙城くん以外に仲が良い男の子はひとりもいない。
女の子の友だちでさえあまりいないから、そんな心配は必要ないと思うんだけど……。
「俺も、百々ちゃんだけだから」
「ば、ばか……っ」
「えーなんで?」
「恥ずかしく、なるから!」
「へえ、真っ赤だもんね」
「言わなくて良いよ……!」
「ハイハイ」
もう、牙城くんはいつもそうなんだから……!
少し怒ってるわたしには、お構いなし。
適当な返事をしてわたしをあしらったかと思うと、牙城くんは突然優しい顔になって、呟いた。