離してよ、牙城くん。


「ところでさ、」



牙城くんは、まだまだ機嫌がわるい。




「俺がいないあいだに百々ちゃんに近づいてるおまえはだれ?」






「……っえ、いや、」





さっきまでわたしたちの会話を傍観していたところで、急に話題を振られ、戸惑う佐倉くん。


佐倉くんの気持ちは、おおいにわかる。




突然、他クラスの不良くんに睨まれるんだもん。


……ぜったい、面倒だし怖いよ。




脅しみたいな言葉を発するくせに、牙城くんという人は、しっかり笑ってる。



目は……、怖いくらいに据わっているけれど。





「百々ちゃん狙ってんのね、うん、無理」





ちょっと首をひねった牙城くん。


バキ、とイケナイ音がして、さあ……っと佐倉くんの顔が青ざめる。



ああ……、もう、またそんなことして!




「が、牙城くんっ!」





ビシっと彼を指差す。


なるべく、眉間にしわを寄せて怖い顔を作って。




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