離してよ、牙城くん。
ふと、漏れる声が、低くなった気がした。
『抗争は終わったんだけど、
……そのあと探してたよ、ナギくんのこと』
たったそれだけの言葉が、なぜかすごく重く感じて。
だれが、とか言わなかったのに、きっとそれは牙城くんにとってなくてはならない存在なんだろうな、なんて思ったら。
ぎゅっと、牙城くんの裾を掴んでいた。
「いまさらじゃん」
冷たく笑い、そう言う牙城くんはわたしの手をそっと離した。
椎名さんも遠くで微かに笑い、話題を変えた。
『まぁね?
あとさぁナギくん、そこにオンナいるっしょ?匂う〜』
……げげっ。
なんでわかるの、というか電話越しなのに匂いなんてしないでしょ……?!
唖然として固まるわたしに、牙城くんはくすっと喉を鳴らした。