離してよ、牙城くん。


「椎名の匂うって言うのは、気配とか女の子とかのことだから、そんな考えなくていーよ」


「あっ、そういうことか……!」



そうだよね、匂うわけないもんね……。

安堵してほっと息をつく。



わかったよ、という意味も込めてこくりと頷くと、牙城くんは「カワイーねえ、ばかな百々ちゃんも」と貶してるのか褒めてるのかわからない言葉をかけてきた。


ぺしっと牙城くんの広い背中を叩いていたら、『うわぁイチャついてんのぉ……』と椎名さんがげっそりと言ったのが聞こえる。




「俺の百々ちゃんだから、取ったら殺すんで、よろ」


「が、牙城くん!ぶっそう!」




『ええ、なんか声すき〜〜、俺惚れるかも』



「……?!」


「きもい、ありえない、切る」





『まあまあ、そこは深呼吸して落ち着こうね?』




自由奔放な牙城くんに慣れているらしく、焦りもせず楽しそうに話を続ける椎名さん。



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