離してよ、牙城くん。
『うん、まあそんなかんじ。
……あ、もしかして百々ちゃん不良苦手?』
喧嘩なんてしているイメージは……ありまくりだったけれど、なんだかんだ噂のひとり歩きだと思っていたから、だいぶショックだった。
というのも、出会いがまず、ふつうではありえない状況だったから。
そういうのもいまは気にせずに接しているんだけど……。
わたしは……、慣れているから不良という存在にはあまり恐怖感はなくて。
そうやって、牙城くんをむやみに怖がらないわたしが、彼は嬉しいんだそう。
────『もも、ちゃん。……ありがと、』
……あんな姿を見て、怖がるなんて、ありえないのに。
ぎゅっと胸が締めつけられて、いちどだけ深呼吸をして、心を落ち着かせた。
ふと牙城くんを見ると、佐倉くんを庇ったのが気に食わないのか嫌味のように言う。
「いや、もとは百々ちゃんが お約束三か条 を破ったのがわるいんでしょーに」
「それは……っ、そうだけど。
……でも、まわりの人が、牙城くんのことを危険な人だって勘違いするのがイヤなんだもん、」
牙城くんは、優しくていい人なのに。