離してよ、牙城くん。
わからない牙城くん
.
「朝倉さんってさ……、“あの”牙城渚と仲良いの?」
次の日のH Rにて。
がやがやとうるさい教室で、そう、となりの席の淡路くんに声をかけられた。
まず、状況から説明するとわたしたちの担任の先生はとてもマイペースで。
朝の挨拶をして雑談し、先生は早々に職員室に戻っていったために、ただいま自由時間。
必然的にとなりの席の人と話をすることはあるわけで、淡路くんが話しかけてくれたんだけど……。
内容が、……濃すぎた。
淡路くんも、あまり牙城くんのことを陰で言うのは怖いのか、控えめだ。
たぶん、ただの世間話なんだろうけど、牙城渚という名前はパワーワードすぎて苦笑いをしてしまう。
「うん、……仲は良いよ?」
たしかにわたしは側から見て牙城くんと仲良く見えると思う。
隠す理由もなくコクリと頷くと、淡路くんは「そっかー……」とため息ひとつ。