離してよ、牙城くん。
その反応に、またも苦笑がこぼれてしまう。
だって、顔に書いてあるんだもん。
“牙城渚は危険だから近づかない方がいい” って。
その気持ちは、わかる。
牙城くんが暴走族の総長であまりいい噂がないのは本当だし、ときどきその権力で厄介な男の子を脅していたりもする。(おもにわたし関係で、)
でもそれは、すべて悪ではないし、そういうふうにみんなに思ってもらいたくない。
逆に言うと、ひとを先入観で決めつけたり、噂だけを信じるようなのは、彼よりも悪だと思うんだ。
「牙城くんは、いいひとだよ?」
首を傾げてそう淡路くんに言うと、彼は「んー……」と唸る。
「たぶんね、朝倉さんにだけだよ。牙城渚の優しさって」
「……そ、そうなの?」
「そうそう。だって俺がこうやって朝倉さんに話しかけてることがバレたら、絶対あいつに……やられるし」