離してよ、牙城くん。
「まあ、俺もそろそろ本気出そうかなあ、と。
牙城渚は喧嘩では勝てないけど、俺、朝倉さんを幸せにはできるよ」
「……」
……どうしよう。
こんな展開などまったく予期すらしていなかったもので、混乱中。
えっと、これは……、淡路くんはわたしのことを好きということでいいんだよね……?
はっきりは言われてないけれどたぶんそう。
ドキドキと不可抗力の速い鼓動は、聞こえないふり。
こんなとき、頭に浮かぶのは決まって牙城くん。
みんなに怖がられてる彼が怖くて、わたしに近づけない……か。
なんだかそれって、変な気もする。
「あ、ありがとう……っ?」
なんて返せばいいのかわからなくて、とりあえず好意に感謝する。
だけど淡路くんは苦笑いをしただけで、またも口を開いた。