離してよ、牙城くん。


考えてみれば、淡路(えみ)くんというひとの謎がどんどん深まってきて。


ぐるぐると頭がおかしくなりそうで、思考を中断した。




「あ、そーだ」



ぽん、と手をつき、なにかを思い出したかのように淡路くんはわたしを見る。



「連絡先、教えてよ」



れんらくさき……。


今日のいまで、まさか連絡先なんて聞かれるとは思っていないわけで。



とっさに断ろうとする。




「え、でも……」


「案外ガード固いね。大丈夫、別にスタ連とか深夜メッセとかしないから」



「あ、そういう心配はしてないんだけど、」



「ならいいでしょ、はい貸して」




ひょいっとスマホを取られ、なにかを操作し、返された。


慌てて画面を見ると、新しい友だちの欄に“えみ”と入っていた。




あわじ、えみくん。


名前がすごく綺麗で、勝手に連絡先を入れられたことに抗議する心はなくなってしまう。








< 77 / 381 >

この作品をシェア

pagetop