離してよ、牙城くん。
割ともう真夜中だというのに、まわりがすこしうるさいのが気になった。
足音やかすかな声。
ふだんではないであろうそれに、怖くなってきて早足で歩く。
なんとなく、スマホを取り出し、ちらりと見た。
液晶画面。
に、映る現在の時刻。
──── 22:59
しまった、と思った。
花葉とのことがあって、うっかり忘れていた。
────“3日後の夜、23時以降、絶対に外出たらいけないよ”
牙城くんの、その忠告が今日だったなんて。
まずい、急いで帰らないと。
わざわざ牙城くんがそんなことをわたしに言ってきたくらいだから、きっと無関係ではないことがいまから起きるんだ。
もういっそ走ってしまおう……、と決心した、そのときだった。
「あれ、こんな時間に出歩いてるなんて、ソーイウコト?」