離してよ、牙城くん。
パシ、と腕を掴まれ、びくりと肩が上がる。
スーツ姿の男の人が、わたしに話しかけている。
────23時。
なにか不吉なことがいまから起きる気がした。
振り払おうと腕を動かすも、びくりともしない。
「え、てかさあ、女子高生?だよね?テンションあがる〜」
「や、めてくださ……っ、」
「え、でもこの時間はそういうことするんだってばあ。
“女狩り”って知んないんだ?まさか」
……女狩り?
なにそれ、なにその物騒な言葉は。
この街でそんなことが起こってるの?
……どうして?
「ってか、顔見せてよお」
間延びした声の男の人が気持ち悪くて、ぶるぶると首を横に振る。
そんなわたしの様子に腹が立ったのか、強引にわたしの髪を掴んだ男が顔をあげさせようとした
────が。