離してよ、牙城くん。
「ふうん。まあ、なんでもいいけど」
かすかな足音が遠ざかっていった。
もう……、顔出してもいいかな?
そっと被らされたジャケットを退けようとすると、牙城くんが先に取ってくれた。
「百々ちゃん。もう家に帰れ」
目が合った瞬間にそんなこと。
真剣に言ってくれているせいか、すき透る瞳がやはり怖く感じる。
わたしがのここにいては邪魔。
そんな思いがひしひしと伝わってきて、うなだれた。
「が、牙城くんも……、“女狩り”?やってるの……?」
信じたくない。
牙城くんはそんなひとじゃないって。
けれど、この闇に包まれた牙城くんは、わたしの知らない彼に見えて恐ろしかった。
牙城くんが牙城くんでないようで、とにかく不安だった。
「ももちゃんさあ、俺も言っとくとそういう人種なわけ。きみが思ってるほど、白い人間じゃない」