俺とキス、試してみる?

唇が離れ、少しのあいだ見つめあう。
初めて素で見る彼の瞳は熱かった。
私から移ったグロスを見せつけるように指で拭う彼が艶っぽくて、つい目を逸らす。

「……やっぱり、キスするときに眼鏡は邪魔なんだ?」

いま聞くのはそれじゃないとわかっているが、それしか出てこなかった。

「いや?
あっても別に邪魔じゃないが、本気ちゅーをするときはない方が集中できるからな」

「本気ちゅーって……」

眼鏡をかけた彼が、にやりと右の口端だけを上げて笑う。
お試しのはずが、最初からがっつり食う気だったのか、こいつは。

「で、どうだったよ? 俺とのキスは」

「あー、……キモチヨカッタ」

正直に言うのは恥ずかしくて片言になる。
でも、ひさしぶりにときめいた。
なんか女子としての活力が戻ってきたというか。

「それはよかった」

くすりと笑い、彼は私のせいで乱れた襟を整えた。

「あー、うん。
ありがとう」

お礼を言うのはなんか違う気がするが、そんな気分だからいい。

「俺でよかったらいつでもキスしてやるけど?」

「は?」

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