無口な侯爵はエメラルドの瞳に恋をする
エルは些細なこともミラルカに話す。
だから昨夜ネリウスと話したこともいつものように伝えた。
「……白ですか」
しかし、その話を聞いたミラルカの反応はいつもと違った。
「それはつまり……旦那様は、エル様に……ええっと、その……」
ミラルカは言葉に詰まった。
ネリウスが本当に言いたいことがなんとなくわかったからだ。
あの御主人様らしい発言だが、相変わらずシャイなようだ。
エルはネリウスの好みが変わったんだとばかり思っているし、この二人は案外鈍いところが似ていていいパートナーなのやら、そうでないのやらだ。
「と、とにかく! 今回は緑でいいと言ったのですからそうしましょう!」
自分から話すと厄介だ。無理やり話を終わらせ、ミラルカは話題を変えた。
「それで、近頃旦那様とはいかですか?」
『ネリウス様はいつもすごく優しいです。とても幸せです』
「……エル様は本当に旦那様がお好きなのですね」
少し茶化したつもりだったのに、エルは大真面目に答える。でも、その答えを聞いてなんだか自分まで温かい気持ちになれた。
「お二人が幸せでいてくださることが私の願いです。あんな旦那様ですが、エル様への愛は本物です。どうかいつまでも仲良くいてくださいね」
ベッカー家が賑やかになったのは、エルが来てからだ。
前当主であったネリウスの父親、そして母親が亡くなってしまってからこの屋敷は寂しくなった。
あの通り現当主のネリウスは人付き合いがいい方ではなく、賑やかなのが好きなタイプでもない。それゆえこの屋敷は久しく静かだった。自分の声が一番屋敷で大きいと思うほどに。
働くもの達は皆ネリウスが好きだったが、ネリウスは幼い頃に両親を亡くしたからか、なかなか人に心を開かない。屋敷の人間には比較的マシだが、外部の人間だと顕著だった。
それを寂しく感じたわけではないが、侯爵家の行く末は心配だった。
だが、エルが来たことで屋敷は変わった。皆の気持ちが一つになったし、今まではそこまで話すことのなかったネリウスとも意思疎通が取れるようになった。エルに対し優しくしようとするネリウスに感化されたのか、お互いが理解を深める機会になった。
だから従業員は皆エルが好きだった。そんな二人が仲睦まじく過ごす様子は優しくて温かい光景だった。
こんな二人をいつまでも眺めていたい。ここで働けることは、本当に幸せなことだと思った。
『ミラルカさんもずっとそばにいてください」
紙に書かれた文字を見て、ミラルカは涙ぐんだ。
いつになるか分からないが、そう遠くない未来、きっと二人はそうなるだろう。その時は全力で祝福しようと思った。
だから昨夜ネリウスと話したこともいつものように伝えた。
「……白ですか」
しかし、その話を聞いたミラルカの反応はいつもと違った。
「それはつまり……旦那様は、エル様に……ええっと、その……」
ミラルカは言葉に詰まった。
ネリウスが本当に言いたいことがなんとなくわかったからだ。
あの御主人様らしい発言だが、相変わらずシャイなようだ。
エルはネリウスの好みが変わったんだとばかり思っているし、この二人は案外鈍いところが似ていていいパートナーなのやら、そうでないのやらだ。
「と、とにかく! 今回は緑でいいと言ったのですからそうしましょう!」
自分から話すと厄介だ。無理やり話を終わらせ、ミラルカは話題を変えた。
「それで、近頃旦那様とはいかですか?」
『ネリウス様はいつもすごく優しいです。とても幸せです』
「……エル様は本当に旦那様がお好きなのですね」
少し茶化したつもりだったのに、エルは大真面目に答える。でも、その答えを聞いてなんだか自分まで温かい気持ちになれた。
「お二人が幸せでいてくださることが私の願いです。あんな旦那様ですが、エル様への愛は本物です。どうかいつまでも仲良くいてくださいね」
ベッカー家が賑やかになったのは、エルが来てからだ。
前当主であったネリウスの父親、そして母親が亡くなってしまってからこの屋敷は寂しくなった。
あの通り現当主のネリウスは人付き合いがいい方ではなく、賑やかなのが好きなタイプでもない。それゆえこの屋敷は久しく静かだった。自分の声が一番屋敷で大きいと思うほどに。
働くもの達は皆ネリウスが好きだったが、ネリウスは幼い頃に両親を亡くしたからか、なかなか人に心を開かない。屋敷の人間には比較的マシだが、外部の人間だと顕著だった。
それを寂しく感じたわけではないが、侯爵家の行く末は心配だった。
だが、エルが来たことで屋敷は変わった。皆の気持ちが一つになったし、今まではそこまで話すことのなかったネリウスとも意思疎通が取れるようになった。エルに対し優しくしようとするネリウスに感化されたのか、お互いが理解を深める機会になった。
だから従業員は皆エルが好きだった。そんな二人が仲睦まじく過ごす様子は優しくて温かい光景だった。
こんな二人をいつまでも眺めていたい。ここで働けることは、本当に幸せなことだと思った。
『ミラルカさんもずっとそばにいてください」
紙に書かれた文字を見て、ミラルカは涙ぐんだ。
いつになるか分からないが、そう遠くない未来、きっと二人はそうなるだろう。その時は全力で祝福しようと思った。