わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
「お仕事でトラブルですか?」
そう質問したが、何も答えてくれなかった。言えない事なのかなと思って追及はしなかった。私ひとりがお母様の所へ行くのってどうなんだろう? と思っていると、今度はお母様から電話が掛かってきた。
『親戚が倒れてしもうて、危ないらしいの。そやから、東京に行ってくるわ』
「あ……ご親戚って東京なんですね。さっき宮燈さんも京都に行けないからって連絡が」
『あらーあの子、真っ先に桜ちゃんに連絡したんやねえ……愛やねえ。戻ってきたら改めてご馳走するさかいに、堪忍な』
「いえ、ご連絡ありがとうございます」
電話を切ったら、殊更に部屋の中がしんとする。
楽しいはずのクリスマスイブ、私は急に独りになってしまった。
暇だから、仕方なく研究室に行き、黙々と翻訳作業をしていると同級生に声を掛けられた。
「クリスマスは彼氏とデートなんじゃねーの?」
「用事できたって」
「清川、もう振られたのか」
人の不幸が楽しいのかニヤニヤしている。研究室にいた他の後輩達にも聞き耳たてられてる気がする。