わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

 十二月は春の人事異動が動き出すタイミングだし、人事考査もあって忙しいらしく、この一ヶ月、一度も会えてない。だから余計に、今日を楽しみにしていたのに。

 会いたい。

 仕事の都合だったら私が東京へ行けばいいけど、ご親戚が危篤って時に押し掛けても大迷惑だろう。宮燈さんが結婚している事は、まだ伏せてあるから私がいくのもおかしいし。会いたいのに、待つ事しか出来ないなんて辛い。

 街に出たら余計に寂しくなったので、かつてのアルバイト先の回転寿司屋さんに行ってみることにした。
 相変わらず店内は込み合っていて忙しそう。でも、活気があって懐かしい。フロアにいたなっちゃんが真っ先に私を見つけてくれて、カウンターのひとり席に案内してくれた。隙を見ては話しかけてくる。
 宮燈さんと食事に行くことはあっても、完全予約制か個室のあるお店を選ぶから、こんなガヤガヤと賑やかな所で飲むことはない。久しぶりで何だか楽しかった。


 会計のあと、なっちゃんが「うち、これからちょうど休憩やさかい裏に行きましょー」と言ってくれたので、休憩室にお邪魔して十五分位おしゃべりした。塩見さんがパチンコを週二回まで減らして、今は厨房のアルバイトを真面目にやってると聞いてびっくりした。

「調理師免許とるって言うてました。週四日、六時間以上の実務経験がいるんやて」
「あの塩見さんが! 凄いね!」
「桜さんに振られたからですよ、きっと」
「え? どういうこと?」
「いやー、何でもあらへん。それより彼氏さんからの連絡が減ってる方が気になりますね」

 なっちゃんにそう言われて胸が痛くなった。
 そうなのだ。
 忙しいのか、連絡がちょっと減っている。平日は勿論、土日でも、半日くらい送ったメッセージが既読にすらならなかったりする。
< 104 / 188 >

この作品をシェア

pagetop