わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
さっきのニュースは、スポーツ新聞の単独スクープを持ってきて放送していた。ひとまず、すっぴんのまま一番近いコンビニまで走って、新聞を買う。
怖いから、家まで帰って紙面を広げる。さっきのニュース映像と同じ写真が載っていた。記事によると先月から数回食事に行っていたようで、ようやく撮れた写真らしい。
なんだろうこれ。
そうか、これはきっと夢なんだ。とてもとても幸せな夢を見ていて、きっともうすぐ目が覚める。そして、私はやっぱり奨学金は全額を実家の借金返済に吸いとられて、アルバイトは掛け持ちして何連勤もしてるんだろう。寝不足になりながら論文を書いて、就職活動も失敗して、きっとハードモードの人生を歩むんだろう。そうに違いない。
しばらく待ってみたけど、目覚める様子はなかった。なら受け入れるしかない。これは現実。単純な話で、宮燈さんは心変わりした。
先月、会えなかった間、この女の人とは会っていたんだ……。
私とはこそこそと食事に行くしかないのに、この人とは堂々と都内のレストランにデートに行ってたんだ。
「あれ、わたし振られるってこと? 別れようって言われちゃう? 結婚式直前に離婚? みんなに報告しないうちにバツイチ?」
そもそも私は、本当に宮燈さんと結婚していたんだろうかと疑惑が生じた。区役所でもあっさりと受け付けられたせいか、実感がわかなかったし。
急に怖くなって、勝手に涙が出てきたから、そのまま泣いていた。宮燈さんと「夫婦」じゃないなんて嫌だ。もう触れてもらえない、名前を呼んでもらえないなんて嫌だ。宮燈さんが私じゃなくて他の人に触れるだなんて、そんなの耐えられない。