わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
それより東京に行ってどうしよう? 着くのはお昼過ぎだから、定時まで待つしかないかな。
熱海を過ぎた頃、やっぱり気になってまたネットで検索をしてしまった。でも、さっきまであった新聞の電子版から、記事が削除されていた。
所属事務所が揉み消した?
不倫なんてイメージダウンだろうから、宮燈さんが既婚者とバレたのでは?
もし、相手の女優さんが、宮燈さんが独身だと思って付き合ってたら、彼女は騙されてたことになる。頭がこんがらがってきた。スマホケースは粉々になったので「八つ当たりしてごめんね」と泣きながら謝って新幹線のゴミ箱に捨てた……。
ちょうどお昼休みが終わる頃、東京駅についた私は、杉岡さんに電話した。
「お疲れ様です。お忙しいところすみません」
『忙しい。俺に何の用だ』
物凄く不機嫌そうな声が聞こえてくる。
「橘部長はご一緒ですか?」
『いや、部長はもう重役会だ。俺は同席出来ない会議だから秘書室にいる』
「では、少しお話出来ませんか?」
『断わる。何で俺が君と話をしなくちゃならないんだ』
「私、橘部長と別れます」
杉岡さんが沈黙して、大きなため息をついて言った。
『話を聞く必要がありそうだな』