わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
男女の機微なんか私には全然わからない。
好きにしなさいと言われた私は、過去の知識を総動員していた。かつて読んだ小説、漫画、観た映画……。
橘部長にも服を脱いでもらって、私が「触れてもいいですか?」と聞いたら、橘部長は無表情のまま「好きにしなさい」と同じ言葉を繰り返した。
恐る恐る近づいて、肩に手を置く。
顔が近い。美形が近い。
睫毛長っ! 絶対私より長い。
肌もめっちゃ綺麗。本当に同じ人間?
私はそのまま橘部長の体をぎゅっと抱き締めた。側に居ると何故か安心する。どうしてだろ? 触れあった所から感じる体温のせい? それとも近づいてるからわかる肌の匂い?
家族以外で他人の肌に触れる事すら初めてだったのに、嫌じゃなかった。これ以上どうしていいか分からずにいたら、全く抑揚のない声で橘部長が言った。
「最後まで好きにしたら」
ま、マグロ?! この人、無表情な上にマグロなんですか?
びっくりして見上げたけど、橘部長は相変わらず無表情で何を考えてるのか全然分からなかった。ただ、何となく「嫌がられてはいない」という事はわかった。
吐息を感じる程近くに、綺麗な、でも無表情の橘部長がいて私を見ている。目が優しい気がした。
知識だけはあるから、それを頼りに何とか努力していた。体を重ねたら、熱くて潤んでるのが自分でもよくわかる。触れ合うと物凄く恥ずかしい。
じわじわ痛いような、ずくずく痛いような感覚がある。気持ちいいより疲れた。変な感じ。
一生懸命だったから、汗ばんできて、頭もぼんやりしてきた。疲れた!
「よく、出来たな……」
「私なりに、精一杯、がんばり、ました」
橘部長が私の腰を掴まえてゆっくり動く。優しくて急に背中がゾクゾクしてきた。
「え、あ……何か……」
「痛い?」
「少し痛いけど……それより……?」
何これ、気持ちいい。おなかの中が熱い。異物のはずなのに私の中に在るべくして存在してるみたい。
どこ? どこが気持ちいいの?
気持ちいいと判断しているのは脳?
思考しながら探していたけれど、初めて経験する快感にだんだん耐えられなくなってくる。
気持ちいい。自分が揺れると、橘部長の綺麗な顔も揺れる。
「はぁ、これが愛か?」
「……橘部長が気持ち、いいです」
「性欲が愛なのか?」
「んっ、そうです……」
私も本能のままに上下に動いて、橘部長の胸に手を当てた。
「性欲も愛です。でも、それだけ、じゃないです」
結っていた髪が乱れてくる。初めて会った日に、橘部長に絡みついてとれなくなった私の髪。
橘部長が私の髪を撫でて、自分の指に絡めて遊んでいた。きっと私達は今、同じ出来事を思い出している。
好きにしなさいと言われた私は、過去の知識を総動員していた。かつて読んだ小説、漫画、観た映画……。
橘部長にも服を脱いでもらって、私が「触れてもいいですか?」と聞いたら、橘部長は無表情のまま「好きにしなさい」と同じ言葉を繰り返した。
恐る恐る近づいて、肩に手を置く。
顔が近い。美形が近い。
睫毛長っ! 絶対私より長い。
肌もめっちゃ綺麗。本当に同じ人間?
私はそのまま橘部長の体をぎゅっと抱き締めた。側に居ると何故か安心する。どうしてだろ? 触れあった所から感じる体温のせい? それとも近づいてるからわかる肌の匂い?
家族以外で他人の肌に触れる事すら初めてだったのに、嫌じゃなかった。これ以上どうしていいか分からずにいたら、全く抑揚のない声で橘部長が言った。
「最後まで好きにしたら」
ま、マグロ?! この人、無表情な上にマグロなんですか?
びっくりして見上げたけど、橘部長は相変わらず無表情で何を考えてるのか全然分からなかった。ただ、何となく「嫌がられてはいない」という事はわかった。
吐息を感じる程近くに、綺麗な、でも無表情の橘部長がいて私を見ている。目が優しい気がした。
知識だけはあるから、それを頼りに何とか努力していた。体を重ねたら、熱くて潤んでるのが自分でもよくわかる。触れ合うと物凄く恥ずかしい。
じわじわ痛いような、ずくずく痛いような感覚がある。気持ちいいより疲れた。変な感じ。
一生懸命だったから、汗ばんできて、頭もぼんやりしてきた。疲れた!
「よく、出来たな……」
「私なりに、精一杯、がんばり、ました」
橘部長が私の腰を掴まえてゆっくり動く。優しくて急に背中がゾクゾクしてきた。
「え、あ……何か……」
「痛い?」
「少し痛いけど……それより……?」
何これ、気持ちいい。おなかの中が熱い。異物のはずなのに私の中に在るべくして存在してるみたい。
どこ? どこが気持ちいいの?
気持ちいいと判断しているのは脳?
思考しながら探していたけれど、初めて経験する快感にだんだん耐えられなくなってくる。
気持ちいい。自分が揺れると、橘部長の綺麗な顔も揺れる。
「はぁ、これが愛か?」
「……橘部長が気持ち、いいです」
「性欲が愛なのか?」
「んっ、そうです……」
私も本能のままに上下に動いて、橘部長の胸に手を当てた。
「性欲も愛です。でも、それだけ、じゃないです」
結っていた髪が乱れてくる。初めて会った日に、橘部長に絡みついてとれなくなった私の髪。
橘部長が私の髪を撫でて、自分の指に絡めて遊んでいた。きっと私達は今、同じ出来事を思い出している。