わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
「山崎ミコからのプレゼントだったのか! むかつくわ!」
「もうさ、実家に連れて行ってるってことは親に挨拶済ってことだよね」
「おお、親ってことは山崎雄輔か! 私、ファンなんだよね」
「え? 息子の森羅の方じゃなく? じいさんじゃん! 八十歳近いでしょ」
「いやあ~もうほとんどテレビ出てないけど、今も渋いのよ。森羅くんのインスタによく出てくる。ほらほらー見て、去年の十一月のだけどさ」
「いや、じいさんじゃん……」
噂話は続いてるから、聞きたくないし入りづらいから別階に行くことにした。あれをプレゼントしたのは私なんですよ。そう思ったけど、今更どうでもいい事だなと思った。
悲しくなってきて人気のなさそうな場所を探して泣いていた。
「桜か……?」
背後から呼びかけられてびっくりした。振り返ると宮燈さんがいる。間違いなく、本物の。手に社用の携帯を持っていて、通話中のようだったけれど、私と目が合うと無言で電話を切っていた。
飾り気のない無機質なオフィスの廊下に、相変わらずの無表情で宮燈さんが立っている。私の夫は今日も綺麗だ。今日は濃いグレーのスーツで、雰囲気も私と二人きりの時とは違う。
仕事中の宮燈さん、三割増しにカッコイイな!!
……って、だから事態はそれどころではない。
本人を目の前にしたら、心臓がバクバクして、怖くて、でも嬉しくて動けなくなった。