わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
「どうして君がここに?」
「お仕事中にごめんなさい。あの……話があって来たんですけど……」
無表情のまま宮燈さんが近づいてきた。少し怒ってる? 追い返される?
後退りしてると、廊下の端に追い詰められてしまった。私と宮燈さんは身長差が三十センチ位あるから、見下ろされると相当怖い。両肩を掴まれて体がびくっと震えた。
私が贈ったネクタイピンが視界に入ってきて、「ああ~今日もつけてくれてる~わあい」と思っていたら宮燈さんの手が頬に触れた。多分、キスしようとしてる。
この状況、第三者がみたらセクハラ! と脳内で叫びつつ、体を押し返そうとしたけど、壁に押し付けられて身動き出来ない。でも、私が力いっぱい突き飛ばしたから、宮燈さんは少し驚いたような表情を見せた。
「気安く触らないでください! この浮気者!」
私がそう叫んだら、宮燈さんが表情を消した。読めない。全然読めない。宮燈さんが無表情で言った。
「すぐに京都に帰りなさい」
「なんで?」
宮燈さんが踵を返すから、それについて行く。もう一度聞いてみた、「なんで?」と。でも答えてくれなかった。
「言えないんですか?」
心底から怒りが湧いてきたから、自分でもびっくりしたくらいに重い声が出た。飛び蹴りしてやろうかしら? と思っていたら杉岡さんが来た。
「小娘! 部屋にいないと思ったら……!」
私達は杉岡さんに怒られて、別階のさっきの会議室に放り込まれた。