わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

 杉岡さんが「三十分捻出しましたから!」と叫んで出て行き、ドアを閉める。私は持ってきた新聞を会議室の机に広げて質問した。

「これは何ですか」
「一緒にいるところを撮られていたらしい」

 あまりにも淡々と言うから腹が立つ。こっちも感情的にならないように話そうと思ったけど、私の手は震えていた。怖い。

「熱愛って書いてありますけど、浮気したんですか?」
「していない。事実じゃない」

「じゃあなんでデートしてたんですか?」
「一緒に食事して話をしただけだ」

「世間一般的にはそういうのをデートって言うんです! いつも私には『自分だけ見ろ』って言うくせに、宮燈さんは余所見するの?」

 私がそう言うと、宮燈さんが黙った。私とは隠れて行くのにね。この女が羨ましくて悔しい。視界に入るのも嫌だと思って新聞をたたんでいると宮燈さんが悪びれもせず言った。

「私が好きなのは桜だけだ」
「……よく……平気で言えますね。だって、実際デートしたんでしょ? 相手の実家にも行ったんでしょ? 向こうはその気なんじゃないんですか? こんなの見せられて私だけって言われても信用できません!」

 宮燈さんは反論しない。本当に家へ連れていったのなら、結婚したい相手として親に会わせたのかな。
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