わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

『今どこにいる?』
「言えません」
『橘部長は一緒なのか?』
「はい? 一緒なわけないじゃないですか。橘部長から逃げてるのに」

 杉岡さんが『はーーーーっ』と四秒位の長いため息をついた。

『橘部長が行方不明なんだよ! 多分君を探してる! どうするんだ小娘! 自分の旦那を無職にする気か?!』

 土曜日だけど、出社予定だったそう。
 迎えの運転手さんから杉岡さんに「常務から『今日は出社しない』と連絡があったのですが……」と問い合わせがあり、慌てて連絡をとったけれど社用も私用も電話が繋がらないらしい。杉岡さんが中目黒まで行き、マンションのフロントで確認したら、コンシェルジュの方が早朝出かける宮燈さんに挨拶したのを覚えていたそう。
 社には急病だと誤魔化したらしいが、杉岡さんは「女を追いかけるなんて」と怒り心頭だった。

『小娘、いま初めて電源を入れたのか?』
「いいえ。昨日の夜、博多駅で一度電源を入れました」
『では、福岡空港までは行ってるな……』

 それを聞いて私の背筋は寒くなった。でも、あの人ストーカーだからやりかねない。

「え……スマホで位置情報バレてます?」
『君は自分の旦那を甘く見るなよ。当たり前だろ』

 なんで私が恫喝されてるんだろうか。
 どうやら、いま通話してることで、この位置もバレそうなので、私は覚悟して夫と向き合うことにした。
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