わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

04. 橘部長に執着される

 なんでこうなったのか、お互いよくわかってないけど、橘部長と男女の関係になった私は、ベッドの中で愛についての私的見解を伝えた。

「古代インドにおいて愛は、広義の欲です。何かを特別に想う事です。だから、のちに興る仏教は解脱を目的にしているから、欲である愛は苦しみなんです」

「そうか。私は君に執着しているようだ。これも愛か?」

 そして私は、橘部長の口からおっそろしいことを聞かされた。

 普段は、面談した学生を上にあげるかどうかは、自分自身の判断と、ひとつ前の面談内容に加えて、学生に一番身近な採用担当からの補足説明で決めるらしい。
 ただ、私に関しては、面談のあと、読み飛ばしていた私に関する全資料を読んだそう。
 リクルーターとOBOG訪問も含めた全面談の受け答えのメモ、ペーパーで出した履歴書・エントリーシートは勿論、添付資料のWebエントリーシートも読み、さらには学科で公開している私のゼミ発表やコメント等も閲覧し、コネクションを使って私の大学の成績を調べ、学費免除の申請書に添付した私の研究資料の写しも手に入れて、ついでにSNSを検索しまくった……と。
 連絡先も住所もバレてるしプチストーカーじゃねぇか、と思ったが口には出さなかった。

「それは……愛ですね」

 私がそう笑うと、橘部長の視線が柔らかくなって、口の両端があがる。
 
 その時、私は、橘部長が笑うのを初めて見た。
 なんて綺麗なんだろう。
 ムラムラしたから、もう一回、襲うことにした。

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