わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
タクシーで稲佐山の中腹にあるホテルへ向かう。くねくねした狭い山道を登っていくから、カーブのたびに隣にいる宮燈さんに少し体がぶつかってしまう。私はドキドキしていたけれど、宮燈さんは無表情のままだった。
これから誰に会うんだろう?
フロントで宮燈さんが何か話をして、マネージャーの名札を付けた人に案内されたのはスイートルームだった。
うーん、ゴージャスな広いスイートルームに物凄いイケメンがいるんだけど、現実味が全くない。目の前にいるのに、二次元を見ているような気さえする。
宮燈さんも美人だけど、負けないくらいの美形。
あ、でも、世界で一番かっこいいのは間違いなく私の夫だけどね!
見られることに慣れている芸能人ってオーラ凄いっていうけど、ほんとに凄いねえ。語彙力が無くなるわ。
「はじめまして。異母弟の山崎森羅です。異母兄は、僕の母と秘密保持契約を結んでますから、僕が代わりに説明します」
爽やかイケメンによる、とんでもない事実を含めた自己紹介に、私はしばらく声も出せずに突っ立っていた。
そして、(……お母さん! お母さんが宮燈さんを見て、森羅くんに似てるって言ってたの、当たってたよ! 兄弟だったよ! この事をお母さんに言ったら心臓とまっちゃうかもねー!!)とミーハーな事を考えていた。