わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
俳優である山崎雄輔が京都へロケに来るたびに、宮燈さんの生家である祇園の料亭に通っていたそう。そこで宮子さんと恋仲になるが、映画の撮影が終わると二人の関係も終わってしまった。
所詮は現地妻的な女だったわけだが、その後、宮子さんは妊娠が発覚して未婚のまま出産した。認知はしないが金は払うということで、多額の口止め料を渡したそう。
「子どもの存在を知っていながら、父はそれを認めなかった。無かったことにして、その後、自分は別の女、つまり僕の母と結婚して、姉と僕をもうけた。ここまではよくあることです」
「昭和初期じゃあるまいし、そうそうあることでもないでしょ」
また心の声が駄々洩れしてしまった。森羅さんは「うん、まあそうだね。ごめん」と笑っていた。イケメンに騙されそうになっていたけれど、こいつもグーで殴っといた方がいいんじゃないかなって気がしてきたが、我慢した。
「三十年以上、存在を無視してきたくせに、余命を宣告された父が何を思ったのか、いきなり兄の存在を家族に暴露しました。死ぬ前に懺悔したくなったのか、もうまともな判断が出来なくなっていたのか僕にはわかりません。結婚前の事とはいえ母は激怒して、すぐに宮子さんと兄を呼んで秘密保持契約書にサインさせました。母は清廉なイメージで売ってる女優だから特に醜聞を嫌うので」
秘密保持契約(Non-disclosure agreement)、企業秘密や個人情報などを第三者に漏洩しないと約束すること。宮燈さんの場合は「親子であることを絶対誰にも言うな」という民法上の契約。