わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

 韮菜拌麺はチャンポン麺を炒めてあるからこってりしてるように見えるけれど、味付けは濃い過ぎず、花韮の香りが丁度いい。叉焼(チャーシュー)が美味しくて、コースの最後だったのに完食してしまった。杏仁豆腐は平らげたけど、特大サイズのゴマ団子はさすがに食べきれなかったので、持ち帰り用に包んでもらった。
 調子に乗って、ビールの次に紹興酒も飲んでいたから、食後の茉莉花茶を頂くころには、頭がふわふわしていた。

「幸せです……。でも無職になると困りますから、明日には東京に帰りましょうね。私も京都に帰ります。卒論提出後のゼミをサボったから教授にめちゃくちゃ怒られるでしょうけど!」
「そうか、私のせいで授業を……悪かった」
「もういいんです。怒られたらそれですみます」

 アハハと笑うと、宮燈さんが微笑み返してくれる。え、好き。
 幸せ過ぎて怖くなってきた……。私は明日しぬかもしれない。

「お食事のあとはどうしますか? 媽祖(まそ)廟も行ってみたいけど、ちょっと距離がありそうです」
「ああ、杉岡さんから、中華街だけじゃなくて中島川沿いにもランタンがあるから、そちらに行けと言われた」
「眼鏡橋のある中島川ですか?」
「仕事すっぽかしてまで追いかけた女と見て来い、と。よくわからないが杉岡さんの言う事には従おうと思う」
「賛成です。私も杉岡さんを信頼してます」

 お土産買って帰りましょうね、と言ったら「匠寛堂のカステラをリクエストされている」とのことだった。抜け目ない。
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