わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

 洗濯機を使わせてもらってる間にシャワーを浴びる。 
 服を着て、髪を乾かして、リビングに戻ると、橘部長が朝食を準備してくれていた。
 
 美人妻! 美人妻がいる!
 卵焼き、焼き魚、お味噌汁……とてもいい匂いがしていた。

「わー! ありがとうございます! いつも朝ごはん食べないからうれしいです!」
「朝食はきちんと摂った方がいい」

「あー……食べない生活に慣れてしまって」
「その原因は経済的なものか?」

「隠しても仕方ないんで言いますが、そうです。基本的にバイト先のまかないか、学食でのランチしか食べないですね!」
「大学には学食を安く利用出来る制度が無かったか?」

「ミールシステムですね~! ありますけど……」

 各大学で名称は違うが、学生の食生活のサポートのために、プリペイドで安く学食を利用できるシステムがある。大学生協で手続きすれば、学生証や学食定期券(ミールカード)でご飯が食べられる。ただ、一番金額の少ないライトプランの約十万円さえ払えないのが我が家の実情。

「まとまったお金が準備できないんです。かつかつの自転車操業なので。ゼミの先輩とか先生が差し入れしてくれるから、常にお腹ぺこぺこってわけじゃないですから大丈夫ですよ!」

 あははと笑ったが、橘部長は無表情だった。

 白いご飯をおかわりさせてもらって、お腹も充たされて幸せ過ぎた。ため息をつきながら私は言った。

「はあ……お味噌汁も卵焼きも、お出汁が上品で美味しかったです……。最高……。橘部長、お料理上手ですねえ……」
「生まれ育ったのが料亭だったから、仕込まれた」
「へえええ!? そうなんですか! いいなあ! 料亭のまかないとか美味しいんでしょうね~!」

 お寿司屋さんのまかないも、かなり美味しいけど!
 私がまた笑ってるのを見ている橘部長は、無表情だったけど、何かを思考してるような顔だなと感じた。

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