わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
もう来月にはこの街で暮らすことになるから、家の周りを散歩してみた。京都の風景に慣れているせいで、高い建物を見ているだけで「ここは東京なんじゃのう……」と声が漏れてしまう。でも、川があるし公園もあるし住みやすそうだなあと思って、少し安心した。新生活は怖いけど、宮燈さんがいたらきっと大丈夫。根拠はないけど大丈夫。まさに『東京砂漠』。
近所に素敵なレストランがあるのを見つけて、お母様から言われたことを思い出した。
「お食事に行く機会も増えるやろから、テーブルマナー講習会みたいなのにも行ってみたらどやろ? うち、なーんも出来へんかったさかい結婚後に行ったけど、美味しいものぎょうさん食べられて、楽しかったわ」
調べてみたら、近くでいくつか開催されていたので申し込んでみた。入社までの間に行こうと思う。変なのを妻にしたな~と宮燈さんが恥をかかないように、そこは何とかしておきたい! ストップ食べこぼし!
家中を掃除してたらすぐに日が暮れて宮燈さんが帰ってきた。思っていたより早かったから「おかえりなさい」と出迎えて、見上げて言った。
「ごめんなさい。まだ、ごはんが炊けてないから、先にお風呂どうぞ」
お風呂の準備は万端だったからそう言ったのに、何故か寝室に連れ込まれて当たり前のようにベッドの上に組み敷かれた。
「私がどうぞと言ったのは寝室じゃないですよ?!」
「君が家で待ってるのは初めてだから、落ち着かなかった」
そういえば宮燈さんが京都に来てくれることの方が多かったし、私が東京に泊まっても一泊だけしかしたことない。朝、見送ったのも初めてだし、こうして夜に帰宅を待っていたのも初めて。首にキスされながら(しまった! 「御飯? お風呂? それとも私?」を言うチャンスだったのか!)と思っていたら、宮燈さんが呟くように言った。
「君はもう入浴したのか? 香りが違う……」
「ああ、さっき素っ裸でお風呂掃除して、終わったらそのままシャワー浴びました。裸でお風呂掃除って楽しいですよね~天井までガンガン洗って」
「裸で風呂掃除……いい……」
「想像で笑うのやめてください。ものすごく変態っぽい」
宮燈さんは少し笑いながら片手でネクタイを解いた。ジャケットを脱ぎ捨てて私の部屋着をめくろうとするから抵抗したけど、下着も一緒に強引にずらされた。ぷるっと出てきた私のおっぱいは、もうGカップまで成長してしまったから、かなりの存在感を持っている。いつものように宮燈さんがキスを落とす。(えっちする元気があるなら大丈夫かあ~)と思いながら、私は夫を抱き締めた。