わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

02. 二人のルール

 二月下旬の結婚式。身内だけの挙式と披露宴だったが、初めて会った宮燈さんの義兄姉の態度が酷くて、また私の堪忍袋の緒はぶっちぶちに千切れそうになっていた。

 義兄は無関心で明らかに面倒そうにしているし、逆に義姉は宮燈さんにすり寄ってくる。白無垢が重くて動けなかったから、ぶん殴るのはやめておいたが、婚礼の席で新郎に色目を使うなんて義姉はどうかしてると思う。
 お色直しの時に、私が眉間に皺を寄せているのに気づいた宮燈さんが、私の手を握って言った。

「桜が怒らなくていい。いつもの事だから。せっかく綺麗な花嫁姿なのだから、私のために笑ってくれないだろうか」

 和装が似合い過ぎて正視できない美しい夫にそんなことを囁かれて、私は腰が抜けた。
 真っ赤になってへにゃへにゃ笑いながら「はひ」と答えたが、隣で介添人のお姉さんも真っ赤になっていたから、宮燈さんの美貌の力を再認識した。この人、その気になれば誰でも落とせるだろうな。浮気しないよう惚れさせとかないと。


 インドでは、また宮燈さんが突撃してきて研究の邪魔をされた。お正月もそうだったが本当に酷い。ムンバイに出張だったと言っていたが、ムンバイとヴァラナシは約1500km離れている。本州縦断くらいの距離をついでのように来ないで欲しい。日没のお祈りを一緒に見られて嬉しかったけど、ムンバイ出張は絶対に職権濫用していると思う。
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