わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

「同期とは協力しあって、切磋琢磨して欲しい」

 それだけ言い残して、宮燈さんは無表情のまま壇上へと歩いて行った。杉岡さんが私の前に仁王立ちして、小声で「家に帰っていちゃつく分には誰も何も言わないが、社内には他人の目が常にあることを忘れるなよ、小娘」と言って、宮燈さんを追いかけていた。

 確かに距離感がおかしかったかもしれない。でも自重してないのは宮燈さんの方だから、自分の上司に言えばいいのに。何か私のせいにされてるみたいだから、あとで文句を言っておこう。
 さっき宮燈さんに触れられた胸に手をやって、動悸がおさまるのを待ってたら、早紀ちゃんが言った。

「…………え、桜ちゃんの結婚相手って本当に橘常務なの?」
「うん」

 私が答えたら早紀ちゃんは絶句して、吉岡は「嘘でしょ、嘘よ……」と呟いていた。
 明日から始まる約二ヶ月間の初期研修も色々言われるんだろうなぁとちょっと気が重くなったけど、想定の範囲内だったので受け流すことにした。受け流す!
 配属先は初期研修の様子も見て決めるそうだから、頑張らなくては!


 入社式で常務兼営業本部長として橘社長の隣に座ってる宮燈さんは、やっぱり無表情だった。
 でも、私は知っている。あの人は強くてとても優しい。
 私はこれからも、宮燈さんを観察する。
 彼の隣で妻として。





本編終



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