わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
ボロボロになりつつ、なんとか心を奮い起たせてたどり着いた双葉の東京本社ビルにも人がたくさんいて、頑張って乗ったエレベーターで私はもみくちゃになっていた。
私は身長が低い。自称150cm(本当は148cm)だから、人がたくさんいる場所では埋もれてしまう。
会議か研修でもあるのか四階でたくさんの人が降りていき、私は人波に流されて、今度は降りるはずの階じゃないのに降りてしまった。
まだ、四階……私が行きたいのは十二階。階段は無理。今の私では多分、途中で行き倒れる。
シルバー基調のエレベーターホールにはたくさんの人が次が来るのを待っていた。
げんなりしつつ、ふとホール奥を見ると、黒いエレベーターの前には誰もいない。
貨物用なのかなー?
そう思ってとりあえず上ボタンを押すと、たまたますぐに扉が開いた。中には男性が二人だけ。
なぁんだすいてるじゃーん、と乗り込み閉ボタンを押そうとした。
「待ちなさい、君は誰だ?」
慌てたような声がしたが、気にせずポチッとボタンを押す。
急に肩を掴まれたから振り返ると、四十代位の男性が怒ったような顔をして見ている。
生真面目そうな顔をしたその男性は、私の首にぶら下がってる「Visitor」のネームプレートをガン見したあとこう言った。
「ここは役員しか乗ってはいけない。案内を見てなかったのか? 見たところ就活生のようだが不注意過ぎる。大学と名前を述べなさい」
……なんですと?
役員専用のエレベーター? そんな表示あったっけ?
全然見てなかった。だから誰もいなかったのか。