わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
「はっ! 一分たりとも時間を無駄にしたくないのに!!」
意識を取り戻した瞬間、私が叫んだから、すぐ横にいた宮燈さんが少しだけ眉を下げた。
「急に大声を出さないで欲しい……」
上半身を起こして、前髪をかきあげてそう言ったから、覚醒直後なのにまた私は気を失いそうになっていた。なんて格好いいんだ、私の旦那様。
「ごめんなさい。また眠ってしまって」
「いや、ちょうど休ませたかったから」
宮燈さんは浴衣を羽織って、私のために水を差しだしてきた。磨かれた綺麗なグラスで、冷たいお水が美味しかった。
そろそろ夕飯の時間だからと、一度浴衣を着る。帯を結んでいると呼び鈴が鳴り「台所に食卓があるから、そちらで」と言い残して宮燈さんが部屋を出て行った。
台所へ行くと、同時に重箱を持った宮燈さんが戻ってきた。相変わらず無表情だったけど、どこか戸惑いを感じているみたいだった。どうしたのかと聞くと、ぽつりと呟くように言った。
「大量の赤飯をもらった……」
困ってる宮燈さんが面白くて私が笑ってると、また呼び鈴が鳴った。今度は何だろう! わくわくする! 「ごま塩を忘れてもうて」とのお母様の声が聞こえて、私は声を殺して笑っていた。
持ってきて頂いたのは、勿論お赤飯だけじゃなかった。
食卓に並べてもらった料亭の仕出しを見ても、貧乏人は「お節みたい!」という貧弱な感想しか出てこなかった。お節に花麩は入ってないよね。