わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
先日、突然桜さんから「相談したいからうちに来て欲しい」と言われて、お邪魔してびっくりした。なんでも彼氏さんのお母さんが大量に服を買ってくれたが、整理しきれなくて困っていたらしい。
可愛い系もお洒落系もスポーツ系も揃ってて、サイズはぴったり。色違いもあって、あちこちのお店で「ここからここまで全部頂戴」って言ったんじゃないかってくらいにたくさんあった。
「ごめんね、いつも頼ってばっかりで。この中で、どれを残したらいいかなあ?」
私なりに考えて、桜さんに似合いそうな服をチョイスして、半分位の量に減らした。残りは実家に送って、体型が似ている妹さんに着てもらうらしい。トップスはサイズが合わなかったが、スカートでいいのがあったので、私も何着かもらってしまった。
後日、お返しにと、衝動買いして使ってない新品のコスメをあげたので、物凄く喜ばれた。
桜さんは本当に綺麗になった。心配になるくらい細すぎた体も標準体型になって、お肌も髪も艶々。連勤しすぎて疲れてギスギスしてる時もあったけど、今は余裕があるのか空気が柔らかい。私とは大学も違って、頭の出来も違うはずだけど、恋愛に関しては同じなんだなあと、前より親近感が湧いて、桜さんがバイトを辞めてしまうのは私も寂しかった。
休憩が終わるのか、塩見さんがようやく椅子を戻して立ち上がって言った。
「桜ちゃんの処女は俺が貰うはずやったのに」
「げ、きっしょ!」
思わず本音が口から出てしまったから、桜さんが爆笑していた。塩見さんは不機嫌そうに桜さんに質問していた。
「桜ちゃんの王子様はどんな奴なん? 俺よりイケとる奴おらへんやろ」
「塩見さんより真面目でかっこいいです」
「ハッキリ言いよったなぁ。妬けてまうわぁ……」
塩見さんは泣きそうな顔をしている。冗談ぽく言ってますけど、思い切り失恋しましたね。可哀想に。
その日のバイトが終わって、昼シフトの数人で雑談しながら、この後飲みに行かないかと話していた。桜さんは用事があるからと断っていた。「あらデートやな」と塩見さんが呟いて、私に向かって言った。
「尾行しようで」