わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
内定式後に、本社から場所を移して研修があり、夜には希望者だけの懇親会もあった。研修所に宿泊も可能だったので、私は「懇親会希望・宿泊希望」とどちらも参加希望で出していた。
懇親会は研修所の食堂にて、立食形式で行われた。少しだがアルコールも出て、かなりくだけた雰囲気。
内定式は採用担当にとってはひとつの区切りらしく、内々定辞退されないように、ここまでにどう学生を保持するかが大変らしい。
総合職採用担当の林さんも、一般職採用担当の斎木さんも楽しそうにしている。
でも、その楽しいはずの懇親会で、私はこれまでの人生で経験した事のない苛立ちを覚えてしまった。
宮燈さんがめちゃくちゃモテている……。
一般職内定者の女子が群がるようにして、宮燈さんに話し掛けていた。
あ、まあ、そりゃそうだよね。採用担当の林さんから、社内外にファン多数と聞いてたし。
聞いてはいたけれど、目の当たりにすると何とも言えない気持ちだった。嬉しくはない。私だって宮燈さんと話したいし側にいたいけど、行くことが出来ない。
女に囲まれても、相変わらず宮燈さんは無表情だった。でも、ボディタッチ多めの女が一人いて、私は何かカチンときていた。
名札に「一般職内定者 吉岡」とあったから、こいつとは同じ部署に配属されませんようにと祈った。私は心が狭いから仲良くできない!
触らないでくださーい!
その人は私の夫なんですよー!
と割って入りたい気分だったが、そんな自分にドン引きしていた。
今の私にはそんな事を言える資格がない。宮燈さんは、きっとまだ私に怒ってる。それに、結婚している事は入社までは伏せておく約束なのだから、そもそもそんな事出来ないし。